研究課題

人工細胞技術は、ヘルスケア、バイオ製造、環境修復に革命をもたらすと期待されています。しかし、エネルギーの生成、変換、貯蔵に課題があり、人工細胞の機能を長時間持続させることが難しく、実用化の妨げとなっています。本課題「Japan-UK SYNERGY」では、東京科学大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、ケンブリッジ大学のトップ研究チームを集結させ、人工細胞が(1)基質からATPを生産し、(2)分子電池にATPを貯蔵し、(3)熱や磁力をATPに変換する、といったエネルギー・ロジスティクス機能モジュールの開発を目指します。この開発により、人工細胞の長時間の機能持続が可能となり、社会への実用展開が期待されます。
また、本課題では相互研究訪問や国際研究会を含む幅広い交流を通じ、人工細胞技術の発展だけでなく、若手人材の育成を通じた国際的な頭脳循環の機会を創出します。
本課題は、恒久的な国際研究ハブとして、人工細胞革命の時代において日英が世界をリードする役割を果たすことに貢献することを目指します。

研究目的

本研究は、人工細胞、人工分子機械、人工遺伝子回路、無細胞バイオテクノロジーといった技術分野において、日英両国が世界的なリーダーとしての地位を確立し、ライフサイエンス分野の新市場を切り拓くことを目指しています。この成長分野を活用するため、学際的かつ国際的な共同研究を通じて、人工細胞内のエネルギーマネジメントに必要なモジュールの構築に関する研究を行うことを目的としています。具体的には、以下の目標に取り組みます:

  • 生物学が持つ自立した複雑性に匹敵する合成システムの構築
  • 学術、技術革新、産業の各分野で合理的かつ広く活用可能な技術の実現

本研究では、この目標達成に向け、日英共同のコンソーシアム “Japan-UK SYNERGY “(Japan-UK consortium for SYNthetic cells through enERGY generation, storage and transformation)を確立します。このコンソーシアムを通じて、人工細胞工学をはじめとするボトムアップ型エンジニアリングバイオロジーの発展に貢献するとともに、関連分野を国際的にリードする研究ネットワークの構築を目指します。さらに、このコンソーシアムを拠点として、日英両国内における学術および産業のネットワークを拡大します。また、本分野における若手人材を育成し、そして両国間での頭脳循環を実現し、この拡大したネットワークを基盤に、将来的にはより広範な国際的頭脳循環の促進にも寄与することを目指します。本研究の第一目標は、人工細胞工学におけるエネルギーボトルネックの解消です。コンソーシアムが確立された後は、共同研究をグループ外にも拡大し、人工細胞工学における他の課題にも取り組みます。そして最終的には、大規模な技術展開や国際的に大きなインパクトを持つ科学技術の開発を実現し、世界的な研究ネットワークを構築することを目指します。

⽇英チーム編成と研究課題

日本側「細胞を創る」研究会 、英国側 fabriCELL などの研究機関で活躍する研究者が本合同チームを結成しました。
研究課題は、エンジニアリングバイオロジー分野における人工細胞の応用時に生じる「機能の維持」に焦点を当てています。特に、エネルギーの生成、蓄積、そして機能への変換の仕組みを総合的に研究します。
本チームは、それぞれ約20年にわたり人工細胞研究を続けてきた、世界的にも中心的な研究者の集まりです。物理学、化学、情報科学、工学、生物学といった多様な分野からこの領域に参入した研究者が協力し、研究を推進しています。

具体的な研究内容